前回は、ルヴァンリキッドを失敗しないためのコツをご紹介しました。
今回は、ライサワー種を失敗しないために知っておくべきことをまとめてみました!
ライサワー種(サワー種)は、ドイツでは一般的な酵母です。
「混ぜて放っておくだけの簡単なのよ!」なーんて現地の人は簡単に言うそうです。
確かにその通りなんですが、混ぜて放っておくだけでも、知っておくべきことを知らないとでは大違い!
しっかりライサワー種の特徴や性質を捉えて、酵母と仲良くなりましょう♪
ライサワー種は、ライ麦を多く配合するパンには欠かせない酵母です。
それはどうしてでしょう?
まず、ライ麦の特徴をおさらいしましょう。
ライ麦は、小麦と違ってグルテンを構成する「グルテニン」がないので、グルテンのようなつながりの強さがありません。
また、繊維質の一種「ペントザン」が小麦の3.5倍も含まれており、これはとても吸水性が良いのでライ麦は水分をたくさん保有でき、それによりしっとりした舌ざわりや長期保存を可能にします。
しかし、この強い吸水力によって粉と結び付く水分が取られてしまって、ライ麦粉中のグルテン形成を妨げてしまうんです。
また、デンプンにも特徴があります。
ライ麦デンプンは固まる温度が55℃~70℃なのに対し、小麦粉デンプンは65℃~80℃で固まります。
そして、デンプン分解酵素アミラーゼの活動に適した温度は、60℃~70℃です。
生地の中に含まれている酵素アミラーゼは、特に固まった澱粉を分解するのが得意なので、ライ麦デンプンは簡単に糖に分解されてしまうのです。
生地中のデンプンがどんどん分解されてしまうと、砂糖水ができてしまいます。
オーブンの熱でデンプンと水を加熱して、モチモチした状態の物を作るつもりが、これでは水分を保てなくて生焼けの状態になってしまいます。
ではどうしたらよいのでしょうか?
そこで、ライサワー種です。
ライ麦粉を多く配合するパンでは、アミラーゼの活動はライサワー種の酸によって抑制されるので、 ライ麦デンプンがきちんと水を取りこんで凝固することができます。
他にも、グルテンが作られにくく弾力性のないライ麦パンも、弾力性が強まり耐久性(きれいに切れるなど)も高まります。
ライ麦粉だけではうまくパンが焼けないので、ライサワー種を入れるということです。
ライ麦パンにライサワー種が必要な理由がわかりましたね!
ライ麦80%配合の、ロッゲンミッシュブロート。サワー種配合して焼いてます♪
でも、ライ麦を多く配合したパンは酸っぱいというイメージはありませんか?
ライ麦パンは酸っぱい…その認識は、多くが間違っています。
もちろん、酸味やクセの強いライ麦パンはありますが、酸味をほとんど感じない風味豊かなライ麦パンもあります!
クセの強い酸味も、チーズなどと合わせるととっても美味しく病みつきになるのです。
そんなおいしい酸味のある一方で、酸味のコントロールがうまくできていないサワー種では、酸っぱいだけのライ麦パンが焼けてしまうこともあります。
そもそも酸味とは?酸っぱさの原因とは何でしょう?
ライサワー種やルヴァン種を含め、サワー種には乳酸菌がたくさんいます。
ヨーグルトにも入っている、あの腸に良い菌です。ので、天然酵母のパンは、腸への負担が少ないという説も!
この乳酸菌は、サワー種の味の決め手になっているのですが、この乳酸菌というのは乳酸と酢酸を作り出します。
この乳酸と酢酸の主な働きを見ると、
・食品の保存性を高める(カビ防止)
という働きをしています。
そこで、大切のなのは乳酸と酢酸のバランスになります。
両方同じ量だとすると、酸味を感じるのは酢酸で、ツンとした酸味を出します。
このツンとした酸味が多いと、パンが酸っぱく感じるのです!
芳醇な香りと風味を醸し出す黄金比は、乳酸8:酢酸2であると言われています。
が!素人ではそこまでなかなか調整しながらサワー種を起こすのは難しいです。
なので、大事なことは、酢酸を増やしすぎないようにすることだと思います。
ここで、乳酸と酢酸が増えやすい環境をまとめます。
高い温度では、乳酸が多く生成され、低い温度では、酢酸が多く生成される
種が固い環境では、酢酸が多く生成され、柔らかい環境では、乳酸が多く生成される
サワー種は完成した後は冷蔵庫で保管しますが、この期間が長いとどんどん酢酸が増えていき酸っぱくなります。
なので、ある程度でリフレッシュ(種継ぎ)することが、良い種をキープしていく大事な秘訣になるのです。
これらを踏まえておけば、ライサワー種も失敗なく管理していくことができるはずです。
実際のライサワー種の起こし方は、こちらへどうぞ!
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・酵母を保護して元気にする
・乳酸過剰になると、パンの老化が早まる